ジョイス・キャロル・オーツ 著、栩木玲子 訳『とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢』を読んだ。

ジョイス・キャロル・オーツを読むのは初めてです。訳者あとがきによると、ジョイス・キャロル・オーツは大変多作な作家だそう。日本でも色々なアンソロジーに収録されているけれども、作家の作品だけがまとまった短編集としては本作と『エデン郡物語―ジョイス・キャロル・オーツ初期短編選集』の二冊だけが日本で手に入れることが出来るもの、とのこと。

どの話も狂気や悪意があって、歯車がズレながらも各人それぞれがそれぞれに考え込んでたりしてるところが狂ってるぞって感じで良かったです。

とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢 ---ジョイス・キャロル・オーツ傑作選

  • 著者/訳者:ジョイス・キャロル・オーツ
  • 出版社:河出書房新社( 2013-02-15 )
  • 単行本:372 ページ
  • ISBN-10 : 9784309206158
  • ISBN-13 : 9784309206158

現代アメリカのノーベル文学賞候補作家による短編集、と書くと大変小難しい感じがするも、ポップな読み口というか思ってたよりも取っ付きやすい。シチュエーションやお話の雰囲気は「奇妙な味」と評されるようなジャンルの作品に近いものの、どの話も心理描写や情景描写が丁寧で、圧倒的に地に足がついている。だから、読み手の生活の延長線上にその「奇妙さ」があると感じられるのかな。

例えば、美しい金髪の少女をめぐる中編、『とうもろこしの乙女』。娘がいなくなったことに戸惑う母の描写が秀逸。娘の心配をしながらも、誘拐として捜査が始まったときに自分が置かれるであろう立場を想像し保身に走りたい様が切実でリアルです。

誘拐、美しくない自身の容姿、妹の誕生、双子の兄の存在、身近な人の死。どのお話でも、自分のコントロールできることの外側で別に起きてしまったこと、暴力的な物事の存在が強く描かれているのが印象的でした。自分が望んだことではない。でもその起きている物事には抗えないし、大なり小なり巻き込まれてしまう。そんな混乱の中で個人がどのような影響を受けるのか。ジョイス・キャロル・オーツはその個人に発生する起伏のようなものを描き出そうとしているのではないかな、と感じました。

〈ほんとうに大事なことについては誰も私を助けられない。〉
(『ヘルピング・ハウス』P.255)

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