ルイス・セプルベダ 著、河野万里子 訳『カモメに飛ぶことを教えた猫』を読んだ。

銀色のカモメが墜落したハンブルクのとある家には、一匹の黒猫ゾルバがいた。「わたしが産む卵は食べないと、約束して下さい」「そして、ひなが生まれるまで、卵のめんどうをみて下さい」「最後に、ひなに飛ぶことを教えてやると、約束して下さい」。瀕死のカモメと交わした約束を守るため、ゾルバと街の猫たちは知恵を寄せ合い、協力する。シンプルでロマンチックなお話。

カモメに飛ぶことを教えた猫 (白水Uブックス)

  • 著者/訳者:ルイス・セプルベダ
  • 出版社:白水社( 2005-11-15 )
  • 新書:174 ページ
  • ISBN-10 : 4560071519
  • ISBN-13 : 9784560071519

百貨辞典をめくり過ぎてすっかり爪が短くなってしまった博士、レストランに住むみんなの意見番である大佐とその秘書(お澄まししていちいち横から口出しするところがかわいい!)、〈向かい風〉と呼ばれる海の男。キャラクター豊かな登場人物(猫物?)たちのやりとりは読んでいて楽しい。

猫だけでもこれだけ性格が違うのだから、カモメやネズミ、それに人間たちが入り乱れたらもう大変だ。ゾルバがネズミたちと「交渉」するシーンは、ちょっと笑っちゃった。

「わかった。中庭を通れるようにしてやろう。ただし、夜、人間がいないときだけだ。われわれ猫には、猫としての名声を守る義務がある」(P.108)

自分とは違うみんなが住むこの世界で、自分が大切にしたいものを守りながら暮らす。それにはたぶん、やり方ってものがある。

文化や主義主張の違う者たちがどうやって共に生きていくのか。作家であるルイス・セプルベダが、種を越える役割を詩人に託したのも、作者がこのお話に込めたかったロマンチックな願いの一端が覗いているような気がします。

「それは、詩人だ!その人が書いているのは、詩と呼ばれるものだ。百貨辞典第十二巻、『し』の巻にある」博士が叫んだ。
「で、どうしてその人間が飛ぶことについて知っていると思うんです?」秘書がたずねた。
「もしかしたら、本物のつばさで飛ぶことについては、知らないかもしれない。でもあの人は、ことばと共に飛んでいるような気がしてしかたないんだ」ゾルバがこたえた。
(P.146)

訳者あとがきまで入れても174ページ。行間も広く文章もやさしい。1時間くらいで読めるかな。仕事の合間にでも、気負わずにどうぞ。

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