キム・ジョンヒョク 著、波田野節子/吉原育子 訳『楽器たちの図書館』を読んだ。

図書館で装丁が気に入って、韓国の文学、とくに自分と世代の近い作家の文学に触れたことなかったなーと思い読んだ。そこにあるものそのままの姿に対する眼差しが優しくて良いです。

楽器たちの図書館 (新しい韓国の文学)

  • 著者/訳者:キム・ジュンヒョク
  • 出版社:クオン( 2011-11-15 )
  • 単行本(ソフトカバー):342 ページ
  • ISBN-10 : 4904855043
  • ISBN-13 : 9784904855041

『マニュアルジェネレーション』、何ヶ月も小遣いを貯めて買ったデジタルカメラの三百ページを超えるマニュアルを読んだことをきっかけにマニュアルの収集を始め、果てはマニュアル制作会社の社長になった男。社会の大多数が注意を払わない存在に、密かに愛を注ぐ人がいることで(結果的に)優しさの総量が世界全体で増えるような話。オタクに対する作者のシンパシー。

『拍子っぱずれのD』、誰も真面目に取り組もうとしない高校の合唱団で1人やる気を見せていた音痴のDが、注目されている新人ミュージャンの公演をイベントプランナーとなった主人公と共に企画する話。「正しい歌」を歌えなかった学生が、社会人となり規格からはみ出してしまったものの中から美しさをプレゼンテーションする様は、おとぎ話みたい。

どの話も、物事は既にそこにあって、そこから自分がいいなと思ったものを友人にそっと教えるような気さくさがあって好きだな〜。あなたが見ているもの、知っていること自体に、優劣はないよって言ってるみたいだ。

自分の悪口を言うことになるが、マニュアルを読んで感動する類の人間は、正常とは思えない。感動というのは極めて個人的な次元の感情だが、世の中には常識的な感動というものがあるのだ。(マニュアルジェネレーション)

わはは、その通り!作者にはこのバランス感覚があるからこそ、DJやマニュアルライター、「何者でもないまま」死にそうになった男、雑貨店を営み続けたある日失踪した母、就職活動に失敗し続ける二人の若者といった色々な人たちの物語が書けたんだろうな。

キム・ジュンヒョクの作品で翻訳されているのはまだこの一冊みたい。訳もすっきりした語調で心地よく、ぜひこのお二人の翻訳で彼の他の作品も読んでみたいところです。

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