オルダス・ハクスリー『すばらしい新世界』とアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』そして死なないぼくら。

オルダス・ハクスリー『すばらしい新世界』を読みました!面白かったなー。効率化の先にある未来を描いたディストピア小説で、訳も良くって読みやすい。SF苦手な人にもオススメできそうです。

すばらしい新世界 (光文社古典新訳文庫)

  • 著者/訳者:オルダス ハクスリー
  • 出版社:光文社( 2013-06-12 )
  • 文庫:433 ページ
  • ISBN-10 : 4334752721
  • ISBN-13 : 9784334752729

舞台は西暦2540年、つまりフォード歴632年。人の完全工場生産に成功した地球です。条件付け教育によってそれぞれの階級に相応しい価値観を持つようになった人間たちは、フリーセックスの奨励・ドラッグの配給・適切なエンターテイメントの供給などによって不満の原因を排除された安定した社会を実現しています。そんな世界に違和感を持った異端者と『文明』から見放された地区出身である野蛮人ジョンの葛藤についてのお話が、『すばらしい新世界』です。

よく働きよく消費し続ければ危険とは無縁な生活が出来て、そこそこ楽しく死んで行ける!という世界はぼくのようなボンクラにとっては魅力的です。なんせ疲れないし悩みも少ない。辛い思いをしなくて済むならそのほうがいいし。でも一方で、シェイクスピアを次々に引用して人間の本質的な『自由』を訴える野蛮人ジョンの、ロマンチックな気持ちもよくわかります。誰かに刷り込まれた『道徳』でコントロールされる幸せではなくて、突き上げるような激情、痛み、その先にある救いとか、絶対的な存在との出会いに対する期待とか。自分を交換不可能なかけがえのない存在と自覚させてくれる、感情のゆらぎに合わせて触れることの出来る、血の滴るような「生」の感触。

ジョンはその二つの間でもがき苦しんで、極端な道を選んでしまう。よく管理された世界と、正論だけでは満足できない人間の業のようなもの。その二つをうまく飼いならす方法について考えるのって、今の時代を生きる自分にとっても近しい問題だなーと感じます。

作中でその両極端をつなぐ存在が、世界を支配する役割を担う総統ムスタファ・モンド。以前はジョンたちと同じように異端の物理学者でしたが、今では社会を回し続ける役割を選択した、元ロマンチストです。彼は、自分が見たかったものと現実の世界の間にある距離をどうやって受け止めて、抱え込んでるんだろうか。ジョンたち異端者に自分の経験を話し、選択肢を与えたのは何かの期待からなのだろうか。個人的にはこのキャラクターが一番興味がありました。

作者自身が追記で書いているようにあり得ないけれども、オルダス・ハクスリーがもし本作を書き直すなら、ムスタファ・モンドの描写がもっと深いものにするのかな。先人の葛藤をより深く知って、野蛮人ジョンは極端ではない、第三の道を模索するのだろうか。

『すばらしい新世界』はディストピア小説の古典としていろいろな創作の下地になっているそうで、アニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』にもその影響が感じられるなーということにも言及しておきます。システムからの逸脱を選ばず、でも抵抗も辞めない常守朱は、後のオルダス・ハクスリーが書きたかった『正気の道の可能性』、狂った世界で死なずに頑張るぼくたちにとっての第三の道に似たものを見出すんじゃないかな、なんて期待をこめて。続編制作も決まったみたいなので、放送を楽しみにしましょう!

2 responses to “オルダス・ハクスリー『すばらしい新世界』とアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』そして死なないぼくら。

    1. 大きなシステムと気づいてしまった個人、てモチーフは多いですが、その中で生き続けていくことへの希望みたいのが似ている気がします。サイコパス、このままずっと続けていくつもりか?と気にしています。コメントありがとうございますー。

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